小田急線祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩数分。ウルトラマンに登場する怪獣「カネゴン」が目印の「わくわく祖師谷」では、手作り生地にこだわったパンやラスク、クッキーなどが店頭で販売されています。季節ごとに異なるバリエーションがおいしく、遊び心に溢れたネーミングが印象的なパンたちは、パン職人の村田敏夫さんが生地作りから手がけたもの。製造工程の一部には、就労継続支援B型事業の利用者さんも携わっています。
大手ベーカリーで学んだ生地作りが味の基礎
わくわく祖師谷で16年間パン作りに携わる村田さん。パンの専門学校を卒業後、大手ベーカリーで5年間パン職人を務めたのち、知人の紹介で開所から間もないわくわく祖師谷に就職しました。福祉センターの跡地を世田谷区から借り受けて開所したわくわく祖師谷では、福祉施設とパン店を併設することが決まっており、2009年当時では全国的にも珍しい取り組みだったと言います。
わくわく祖師谷のパンのベースになっているのは、村田さんが前職で学んだ生地作り。長い時間発酵させることでふわふわ感が生まれる食パンや、惣菜やクリームに合わせた味わいのバターロール、ほんのり硬いソフトフランスなど、パンの種類に応じた生地を手作りしています。
一番人気はあんぱんやレアチーズなど、バリエーション豊かな「もちもちシリーズ」。その名の通りもちもちの生地の秘訣は、小麦粉に熱湯を加えてこねる湯種(ゆだね)にあるそう。季節に応じて変わるラインナップが多くの方に愛されています。
天然酵母と自家製酵母を使ったパンも、人気メニューのひとつ。ハードな食感がおいしいパンは、コンテストでの入賞経験もあり、村上さんの得意分野だそうです。通常のパンよりも製造に時間がかかり多くは作れませんが、そこには村上さんのこだわりが詰まっています。
それぞれができることを大切に
毎朝のパン作りは午前9時からスタート。生地をこねて発酵させ、成形して焼くまでの工程は村田さんとスタッフの2名が担当しています。就労継続支援B型事業の利用者さんは午前9時半に施設を訪れたのち、掃除や洗い物、翌日のための仕込みや計量を手伝い、わくわく祖師谷でのパン作りをサポートしています。メロンパンの皮など、一部の生地は利用者さんとスタッフが一緒に作ることもあります。
最近はわくわく祖師谷のパンが人気で村田さんの手が追いつかず、利用者さんと一緒にじっくりパンを作る機会も減ってしまったそう。そこで店頭での販売用とは別に、施設の利用者さん自身が食べるためのパンを作る機会を定期的に設けるようになりました。「それぞれの個性がパンの形や模様にも現れるんです。上手に作ることよりも、楽しんでもらうことを大切にしています」と村田さんは教えてくれました。
美味しく安心できるパンをこれからも
村田さんは一人のパン職人として働きながら、安心して美味しいパンを楽しんでもらうことで、障がいのある方がパン作りに関わることへのネガティブなイメージを払拭したいと語ります。実際、わくわく祖師谷で作られたパンは店頭だけでなく、他の福祉施設や世田谷区役所、商店街のイベントなどでも販売されており、その味わいやクオリティが評価されています。
そしてパン作りは、利用者さんにとっても生きがいや楽しみを感じる一助になっている。それぞれの得意なことやできることが積み重なって生まれた、こだわりのパンをぜひ味わってみてください。
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